数学なんて何の役に立つのか?

「数学なんてなんの役に立つんだ」と考える人もいると思います。確かに外から見る人にとっては中にどんな数学が使われていても、その中身を知らず使えればいいブラックボックスでも構わないかもしれません。しかし皆さんはその中身を作るための技術者になるために大学に進学したと思います。そんな中身を理解するためにも数学について勉強しておきましょう。

線形代数(行列・ベクトル)

ロボティクスでよく使う行列計算に回転行列があります。地図を見ながら歩いている時、今向いている方向が地図上でどんな向きにあるか、そして目的地は地図ではこの方向だから今自分が向いている方向に対してこっちの方角だ、と無意識に考えていると思います。今行った変換を数学的に行うと回転行列が使われています。

ロボットは様々なセンサーを使い自分の周りのことを把握しています。これら別々のセンサーが向いている向きはバラバラなのでそれぞれロボットが向いている向きに揃える、今度はロボットが持っている地図に揃える、などと何度もなんども回転行列で変換を行っています。このような変換を自由に扱えるよう線形代数の知識が求められています。

微分積分

微分積分の応用先はどのようなものがあるでしょうか。一番簡単なものは位置・速度・加速度の関係です。ロボットはこれら全てを取得できるわけではなく、取得できた一部の情報から他の情報を推定しています。この推定に微分積分が使われているのです。

また、微分積分をこの式はこの式になるとただ暗記している人も多いかもしれません。この研究室で必要となる微分積分は違います。微分積分の定義というものを理解し、それをプログラミングに起こせる、この一連の知識が求められています。

確率・統計

確率・統計はどのような分野があるでしょうか。皆さん10m前に歩けと言われて誤差なく10m歩けるでしょうか?たいていの人は数cm~数十cm、メジャーなどで測っても数mmの誤差が出てしまうでしょう。これはロボットでも同じです。このような誤差はメジャーが狂っていない限り10m付近に分布するでしょう。この分布が確率です。

また、目印なしで歩いた10mと目印ありで歩いた10mどっちの10mが正確でしょうか?もちろん目印ありの方でしょう。こういった場合目印なしが確率低く、目印ありが確率が高いと言えます。こういった情報を組み合わせるとき確率の良し悪しも考慮して組み合わせるため統計的な処理が行われます。

このように絶対に正確であると判断できない世界で行動する以上ロボットは確率・統計の技術を用いて世界を判断しています。ロボットを作る皆さんにはロボットの考え方を理解し生み出せるよう確率・統計の知識が求められるのです。


確率ロボティクス

あなたが大学の学部1〜4年生であれば,是非以下のリンクのコースを受講し,最後までやりきってください.ロボットの位置を確率的に推定するための数学の基礎と計算アルゴリズムを無料で学ぶことができます.これは無人運転車を始めとした移動ロボットで最も重要な技術のひとつです.週4時間程度x7週間がめやすなので,ほぼ,半期の授業1科目分と同等です.本研究室に入室する学生は,すべて,以下のコースを修了していることが求められます.もしも,この内容に興味が持てない/最後までできないのであれば,本研究室を志望することは避けたほうが無難です.

自律型移動ロボットの位置推定(確率ロボティクス)


数学は役に立つ

みなさんの学んでいる数学がいろんなところに役に立つということがわかってもらえたでしょうか。このページで説明したことはロボティクス分野における応用でもほんの一握りです。実際はもっといろいろな応用先が存在します。興味を持った人はどんどん調べてみてください。そこで使われる要素を学ぶやる気につながると思います。そんないろいろな技術の基礎となる数学を学んでおくことは、あらゆる技術を理解するのに欠かせないものですから、みなさんは数学を十分に学んでおいてください。