終焉の始まり

いま,ロボット研究は変革のときを迎えようとしています.かつて,大学の研究室が研究開発の主戦場であった,船舶,航空機,自動車がそれぞれそうであったように,ロボットは大学での研究フェーズを終え,産業界に軸足を移そうとしています.

例えば,無人運転車の研究は長らく,CMUを始めとしたごく一部の大学と軍だけのものでした.変革の契機は2004, 2005年に行われたDGC (Darpa Grand Challenge) と,2007年に行われた DUC (Darpa Urban Challenge) の,いずれも米国のDARPA:国防高等研究計画局が開催した技術チャレンジでした.

この技術チャレンジは,米国の国防予算で実施されたものですが,参加者の主力は大学でした.主要な大学はそれぞれ,多くの企業スポンサーから資金や技術提供を受けていました.このイベントは大成功を収め,わずか数年のうちにロボット自動車は非常に賢く自律走行ができるようになりました.

イベントの後,無人運転車の将来性が認められたため,主戦場は大学から産業界へと移りました.実用化には巨額の資金や開発リソースが必要であることも理由の一つです.

現在のメインプレーヤは Google (Waymo)等の新興IT企業,Tesla, Uber, nuTonomyなどの自動車関連ベンチャー,GM, Toyota, Mercedes, Audi, Delphi などの既存の自動車関連企業です.

大学は一部の先端の要素技術を担っていはいますが,すでにメインプレーヤではありません.つい先日まで,MITの研究チームに過ぎなかったnuTonomyは,起業後,Delphiにバイアウトされ,大きな資本傘下の立派な企業になりました.

ロボットが世界を変える

もちろん,無人運転車は,急激に変化が起こったロボット系研究分野の一例に過ぎません.大学でのロボット研究が突然役目を終えて終わりを迎えるわけではなく,産業化されにくい研究内容は残り,少なくともあと30年くらいは役割があり続けるでしょう.ただし,大学におけるロボット研究の「終焉のはじまり」に差し掛かっていることは疑いようのない事実です.

haneda

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